(1)マウス胎仔の唾液腺、乳腺、毛包の上皮形態形成初期過程では、カドヘリンと複合体を形成し、カドヘリンの接着能に必須の役割を果たしているα-カテニンの発現が特異的に減少していることを明らかにした。このことは、これらの上皮ではカドヘリンを介した細胞間接着システムが負の制御を受けていること、そして、デスモソーム構成分子の消失に関するこれまでのデータと合わせると、これらの上皮では細胞間接着システム全体が負の制御を受けて細胞間接着力が低下していることを示唆している。現在、これらの器官での上皮細胞間接着システムのダウンレギュレーションに関わっている候補分子を見つけ、解析中である。 (2)胎性11〜12日目肺上皮との再結合培養実験から、唾液腺間充織には上皮組織における細胞の多層化を引き起こし、細胞間接着システムをdisorganizeする能力があることを明らかにした。このことは、唾液腺形成過程初期過程の上皮組織における細胞の多層化および細胞間接着システムのダウンレギュレーションは間充織との相互作用の結果であることを示している。また、唾液腺間充織による上皮細胞の多層化は、胎生14〜15日目肺上皮を使った場合には見られなかった。このことは、肺上皮の性質が比較的短い時間の間に大きく変化することを示唆している。
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