トラップベクター(pU-Hachi)を用いて現在まで109クローンを単離し、サザンブロットでトラップベクターの挿入パターンを調べたところ、約7割が1コピーのみの挿入であり、現在用いているエレクトロポレーションの条件がよいことが確認できた。この1コピーのみ挿入のクローンについて、未分化及び胚様体でのβ-geo遺伝子の発現を調べ、パターンにより分類を行った。その結果、まず、ほぼ全てのクローンでいずれかの時期に染色がみられ、このベクターでのトラップ効率は大変良いことが分かった。また、約5割のクローンは分化後に発現の上昇を示した。いくつかのクローンについては、ベクター挿入部位周辺のgenomicDNAの回収にも成功している。トラップベクター挿入時にプラスミドレスキューに用いるpUC部分が脱落してしまうクローンが4割以上も存在していた。そこで、これらのクローンに、新たなプラスミドをCre/lox部位特異的導入法を用いて導入した。この場合は、loxPの後のポリAシグナルを利用する形での導入を行ったので、導入効率は大変良く、良い場合にはほぼ100%、最も悪いものでも2割の挿入効率であった。現在までに17ラインのpU-Hachiトラップクローン由来のマウスを得ている。他のトラップベクター由来のマウスラインも合わせると、23ラインになる。そのうち、ホモ/ヘテロのgenotypingが出来ているものは13ラインあるが、胎生致死の表現型を示すものはうち8ラインであった。各ラインで、胎児期及び成体でのβ-geo遺伝子の発現パターンを解析しているところであるが、胎生期では全身が、成体では脳と心臓(特に心房)が染色されるものが多いようである。今までで、トラップされた遺伝子が明らかになったものとしては、CBP、CyclinB2、spl.crk、dynamin.Suilなどがある。
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