まず、ニワトリの前胃と砂嚢を用いてディファレンシャル・ディスプレイ法で単離した遺伝子、FKBP65の蛋白質をコードしている領域全ての単離に成功した。この遺伝子の発現領域をインシチューハイブリダイゼーション、およびノーザンブロット法で詳しく調べたところ、消化管や血管で将来平滑筋になる細胞、および分化した平滑筋特異的であることがわかった。この遺伝子の機能をしるため、全てのFKBPの機能を阻害する薬剤である、FK506を加えた培地で消化管を培養したところ、平滑筋の分化が見られなかった。このことからこの分子は平滑筋分化を制御する因子であることが示唆された。マウスで単離されているFKBP65とはアミノ酸レベルである程度類似性があるものの、発現領域が大きく異なることからこの遺伝子はFKBP65のニワトリ相同遺伝子ではなく、新規遺伝子である可能性が高く、名称をcFKBP/SMAP(smooth muscle activating protein、平滑筋活性化蛋白質)と変更した。次にcFKBP/SMAPの機能を直接確かめるため、この遺伝子を培養間充織細胞に強制発現させた。その結果FKBP/SMAPを発現させた細胞だけが平滑筋に分化した。以上のことから、FKBP/SMAPはこれまでにほとんど報告のない平滑筋分化を制御する因子であると思われる。今後はこの遺伝子の発現調節に上皮因子であるShhや、平滑筋にならない間充織に発現するBMPなどがどのように関わっているのか調べてゆきたい。
|