研究課題
消化管間充織はどの部域においても、多少の厚さの差はあるが似たような分化を遂げ、内側の内胚葉性上皮に近い側から、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層が位置し、平滑筋層は最も外側に分化してくる。このような上皮を中心とした同心円状の分化がどのような分子機構で制御されているのかは全く研究されてこなかった。我々は平成9年度の研究で平滑筋分化を調節する新規分子、cFKBP/SMAP(SMAP、FKBP65を改名)を単離した。この分子は平滑筋予定域に早くから発現していることから、SMAPをマーカーとして用い、消化管平滑筋の位置特異的分化機構を調べた。まず、Shhのシグナリングに関わる分子とSMAPの発現域を比較した。するとShhは上皮に、Patchedは上皮直下の間充織に、BMP4はSMAPと相補的に上皮に近い方の間充織(粘膜下層と粘膜固有層に相当)に発現した。さらに全ての間充織は平滑筋分化のポテンシャルを持つものの、上皮がPatchedおよびBMP4の発現を誘導し、SMAPの発現、および平滑筋分化を阻害していることを明らかにした。また、Shh発現細胞、ウイルスによって強制発現させたShhは間充織分化に対して上皮とおなじ作用を持つこと、およびサイクロパミンによって上皮のShhの作用を阻害するとpatchedやBMP4の発現はなくなり、上皮直下の間充織にもSMAPが発現することがわかった。これらの結果をまとめると、上皮間充織相互作用が間充織の層状分化に必要であり、内胚葉性上皮の分泌するShhは間充織の同心因状のパターン形成に重要な因子であると結論される。上皮は肢芽におけるZPA、神経管における脊索や底板と同様に、腸管間充織分化におけるパターニングセンターとしての役割を担っていると考えられる。
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