ニワトリ網膜視蓋系における特異的神経回路の形成に関わる細胞機構を理解するため、前年度までに作製した視蓋の標的層部を特異的に染色するモノクローン抗体について、その分布や性質を詳細に検討した。その結果、TB2と名付けられたモノクローン抗体は、視蓋の特定層だけでなく、網膜においても、二部のシナプス形成が始まる時期に限定して発現している抗原を認識していることが判明した。また、この抗原を強く発現する不死化ウズラ細胞株の単離に成功した。また、TB2とは別の標的層を認識するモノクローン抗体TB5については、その標的層にある特殊な細胞において発現していることが推測された。これらの知見は、今後、これらの抗体の抗原が同定されることで、ニワトリ網膜視蓋投射における特異的神経結合機構の分子・細胞機構の解明のみならず、神経回路形成の基本原理の理解に役立つことが期待される。
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