1 小脳皮質における抑制性神経回路網の発生--C57BL系マウス生後各日令の小脳を採取し、以下の方法で染色し、抑制性神経回路網の発達を検討した。 (1)Glutamate decarboxylaseおよびGABA自身に対する抗体を用いて抑制性ニューロンを染色した。 (2)抗ニューロフィラメント抗体を用い、バスケット細胞の軸索とその終末を染色した。 (3)グリシンに対する抗体を用いて、ゴルジ細胞の軸索終末を染色した。 生後3日目に顆粒層にゴルジ細胞の軸索終末、5日目に分子層に星状細胞の終末、10日前後からプルキン工細胞周囲にバスケット細胞の軸索終末が順次確認された。これらの終末は生後1カ月までその密度を増した。以上のことから、小脳発生過程に置いて、細胞ごとに異なったタイムテーブルでシナプスを形成し、完成にほぼ1カ月を要することが明らかとなった。 2 GABA_A受容体サブユニットmRNAの発現変化--GABA_A受容体の機能の多様性を担うと考えられるα群とδ群のサブユニットのうち、小脳に発現するα1、α2、α3、α6、δの各サブユニットmRNAの分布を、in situ hybridizationを用いて解析した。α1は生後すぐから、α6とδは生後1週令から発現し、アダルトにおいて顆粒細胞層に強い発現を認めた。一方、α2およびα3は主として胎生期に多く発現し、生後漸次減少し、アダルトに置いては、プルキン工細胞層にα2が僅かに残るのみである。 3 GABA_A受容体サブユニットに対する抗体の作成--α1、α2、α3、α6およびδサブユニットに特異的なアミノ酸配列のペプチドを合成し、ウサギおよびモルモットに免疫した。 今後、作成した抗体を合わせて用いて、抑制性神経回路網の発生とGABA_A受容体サブユニットの発現・局在の変化の関係を詳細に検討する予定である。
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