我々は中枢神経系におけるイノシトールリン脂質代謝系の情報伝達機構に関わるジアシルグリセロール(DG)キナーゼの役割を追及する目的で、I型からIV型のDGキナーゼアイソザイムのcDNAを単離し解析を行っているが、このうちIV型DGキナーゼは、核移行シグナルを含んでいることから核内イノシトール情報伝達系に関わることが示唆されている。これまで、IV型DGキナーゼのcDNAにエピトープタグをコードする配列を付与し、培養COS細胞に強制発現後エピトープタグに対する抗体で細胞内局在を検討した結果、核に強い免疫反応が検出されIV型DGキナーゼが核に局在することが明らかとなった。 本研究では、IV型DGキナーゼが中枢神経細胞においても核に局在するかどうかを検討するため、特異抗体を作製した。まず、IV型DGキナーゼのカルボキシル基端約300アミノ残基をコードするcDNAを昆虫細胞培養系(sf9細胞)に導入し、この領域の蛋白をネイティブに近い形で発現させ、発現蛋白が可溶性画分に回収されることを確認した。その後大量発現を試み、精製を行った。次に精製蛋白をエマルジョンと共にウサギに数回免疫し、免疫血清を採取した。ラット脳ホモジネートを用いてウエスタンブロットを行ったところ、作製した抗体はIV型DGキナーゼの推定分子量104kDa付近で単一バンドを認識することが判明した。
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