神経回路網形成の特異性を担うメカニズムを投射のリモデリングという観点からニワトリ網膜視蓋投射トポグラフィックマップにおいて研究した結果、後側視蓋細胞は網膜視蓋投射の発生後期、マツプリモデリングの過程と時期を同じくして一過性に撤退誘導因子を分泌し、本来の標的ではない後側視蓋の領域に侵入した耳側網膜軸索の撤退を引き起こすことが明らかになった。この因子は撤退誘導因子と名付けられ、マップのリモデリングに関わると考えられた。本研究は、マップのリモデリングをさらに理解するために、撤退誘導因子を生化学的に同定することを目的としておこなわれた。 これまでに撤退誘導因子を同定するために開発した両面チャンバーという培養方法を用いて、孵卵7日の視蓋細胞を培養した。培地に放射性同位元素でラベルされたアミノ酸を加え、細胞が合成した蛋白質をラベルし、条件付け培地を回収し、濃縮した。サンプルは二次元電気泳動の後、オートラジオグラフィーにて解析した。撤退誘導活性の認められる後側視蓋細胞条件付け培地に特異的に見いだされる蛋白質のスポットを探索したが、撤退誘導因子の発現パターンのクライテリアを満たす候補分子は同定されなかった。これは撤退誘導因子量が今回用いた方法の検出限界以下であったためと考えられた。そのため、部分アミノ酸配列の決定を行うことはできなかった。
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