今年度は、リーラー突然変異マウスの原因遺伝子産物リーリンの解析を中心に以下の研究を行った。 1. リーリンの機能解析を行うために、まずはリーリンの全長蛋白質を充分量得ることのできる系を確立した。 2. l.で得た系を用いて培養実験を行った。その結果、小脳においてリーリンは直接プルキンエ細胞の移動をattractiveな方向へ制御していることが示唆された。また、大脳におけるリーリンとそのシグナルを受容する細胞の相互作用はadhesiveなものであってrepulsiveなものではないことが示唆された。 3. リーリンにはEGFモチーフを含むリピートを8回繰り返す構造があり、必須な働きを担っているものと推定される。ところがCR-50(リーラーに正常胎児脳を免疫して得た機能阻害抗体)はリピート構造より上流の三次構造を認識することを明らかにした。CR-50はリーリンの機能をin vitro、in vivo・双方で阻害することを考慮するとこの結果は興味深い。 4. CR-50部位の直後でtruncateしリピートを全く持たない新規分子を発見した。重要な働きを担っているとされるリピート構造を持たないこの新規分子は特異な構造を持つと言え、全長リーリンの機能発現を制御している可能性が考えられる。 5. リーラーと酷似した表現型を持つ新しい突然変異マウスを発見しyotariと命名した。yotariではDablと呼ばれる細胞内のリン酸化分子が欠損していることも見いだし、またその分布はリーリンと相補し互いに隣接する細胞にあることも明らかにした。yotariではリーリンが正常に産生されていること、リーラーではDablのRNAレベルは正常であるものの蛋白質が数倍に増えていることも最近明らかにしており、Dablはリーリンを受容する細胞内でそのシグナル伝達の下流にあると考えられる。
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