線条体の局所回路の解析を進めていく上で、個々の神経細胞の性質を明らかにすることは非常に重要なことである。本年度は、線条体に認められる介在細胞のうち、ホールセル記録法でFS細胞およびLTS細胞と分類した細胞がGABAを伝達物質とするかどうかに焦点をあてて検討した。その結果、下記の事がわかった。 (1)ホールセル記録の後、バイオサンチンを注入し、DAB反応処理を経て、ひとつの神経細胞の全体像を染色した。光学顕微鏡での形態面からの観察と描画を行った結果、FS細胞とLTS細胞は形態的に異なった特徴を示す事がわかった。具体的には、FS細胞の軸索は、樹状突起の分布領域よりやや広い領域に密に分布しているが、LTS細胞の軸索は樹状突起の分布領域より数倍広い領域に軸索を疎に分布させているという違いがあった。 (2)電子顕微鏡観察用として、軸索の一部を切りだし、超薄切を試みた。この超薄切片を抗GABA抗体(ウサギ血清)で反応し、さらに、コロイダルゴールド(15nm径)標識抗ウサギIgG抗体で反応する。電子顕微鏡を使用して観察した結果、注入神経細胞の軸索にコロイダルゴールドが観察されたことから、これらの介在細胞の伝達物質はGABAであろうということが推測された。また、両者の軸索終末とも、抑制性神経終末の特徴である、棘突起の根元の部分や樹上突起の幹の部分にシナプス接着していたことから、これらの介在細胞は、GABAを伝達物質とする抑制型神経細胞であることが示唆された。
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