研究概要 |
1.SCG細胞における細胞生存へのNF-kB経路の関与について (1).NGFに依存したSCG細胞の細胞生存とNF-kB経路の活性化の有無 IkB-a蛋白質の分解抑制剤N-tosy1-L-phenylalanine chloromety ketone(TPCK)及びNF-kB siteへの転写調節因子結合阻害剤pyrrolidinedithiocarbamate(PDTC)を用いてNF-kB経路の活性を阻害したが、NGF存在下でのSCGの細胞の生存は抑制されなかった。この結果から、NGFによるSCG細胞の生存においてNF-kB経路は関与していないか、関与はあっても主要経路ではないと考えられた。 (2).Thapsigargin(TG)によるSCG細胞の細胞死抑制効果とNF-kB経路活性化との関係 NF-kB siteの活性化を導くTG処理によるNGF除去後のSCG細胞の細胞死抑制効果について検討した(申請時は平成10年度に実験を計画していた)。TGは通常のCa2_+濃度(1.8mM)下でははっきりしないが、培地中のCa2_+濃度を30mMまで高めると細胞死を遅らせた。この遅延効果はNF-kB経路を阻害しても影響受けなかった。TGは、Ca2_<+->ATPaseの阻害剤で細胞内Ca2_+ストアの放出を促す作用を持つことも知られており、細胞死遅延はこのCa2_+に依存していると推測される。現在、NF-kB siteの稼働状態をゲルシフトアッセイ(Gel Shift Assay Systems,Promega)により確かめている。 TGの効果は細胞種によって生存維持にも働くし、細胞死を誘導する系もあることが知られている。平成10年度は、小脳顆粒(granule)細胞の系についても同様の解析を行い、神経細胞の生存とNF-kB経路の関係を明かにしたい。 2.神経細胞死に応答して発現が増加するミクログリア遺伝子mrf-1の単離 ラット小脳細胞の培養系で神経細胞死に伴い発現が増加する遺伝子の単離を試みた。単離した5つの遺伝子のうちの1つ(mrf-1)について細胞死に伴う発現量の増加をノーザンブロットにより確認した。mrf-1 mRNAの全配列の決定後、リコンビナント蛋白質を作製しMRF-1を特異的に認識する抗体を得た。この抗体を用いてMRF-1を産生している細胞を探したところ、ミクログリアにのみシグナルが認められた。mrf-1は、生体内でも神経細胞死・細胞変性に応答して発現が増加していることを確認した。
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