(1) 小脳granule細胞の生存/細胞死抑制におK2おけるNF一kB経路の活性化の有無 N-tosyl-L-phenylalanine chloromety ketone(TPCK)によりNF-kBの活性を選択的に阻害したときの、高カリウム培地での小脳granule細胞の生存/細胞死を調べた。いくつかの濃度(1〜10uM)についてTPCKの影響を調べたが、明かな効果は認められなかった。しかしながら、最近、TPCKがアポトーシスの実行酵素であるカスペースの活性も阻害することが報告された。TPCKがカスペースを阻害したため、結果的に細胞の生存が維持された可能性もでてきた。神経細胞の生存/細胞死抑制におけるNF-kB経路の活性化の有無についての判断には、ゲルシフト法による実際のNF-kB siteの活性状態のアッセイや別の阻害剤を用いた実験、NF-kBの強制的な活性化等も行い、更に検討を重ねる必要がある。 (2) 神経細胞死に応答して発現が増加するミクログリア遺伝子mrf-1の機能解析 in vivoでの神経損傷に応答したミクログリアでのmrf-1/MRF-1の発現増加を明らかにする一方で、ラット小脳細胞の培養系及び単離したミクログリアを用いてのmrf-1発現とミクログリアの活性化状態、増殖、捕食等との関連調べた。aphidicolinを用いてミクログリアの増殖を完全に抑制した場合にも、小脳細胞培養系での顆粒神経細胞の細胞死に応答したmrf-1mRNAの増加が、ノーザンプロットにより確かめられた。蛍光標識したイーストの粒子であるZymosanAを捕食させてもmrf-1/MRF-1の増加は起こらなかった(これらの結果はJ.Neurosci.に掲載された)。またmrf-1発現レベルはramified/resting microguliaよりも、moeboid/activate microgliaでより高いこと、MRF-1がミクログリアの新しいマーカーとしても有効なことを明かにした(論文投稿中)。単離ミクログリアでのmrf-1発現は、IFrによる処理でわずかに高まるものの、ミクログリアの活性化剤として知られるLPSではむしろ減少した。NO産生能を指標にいくつかの薬剤処理によるミクログリアの活性状態の変化を調べ、その時のmrf-1発現レベルを解析したが、それらの間に相関は見られなかった。現在のところMRF-1の機能の特定には至っていないが、近年指摘されている脳疾患・障害下におけるミクログリア機能の重要性からも、引き続きこの研究を進める必要がある。
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