本研究ではRIトレーサー法で観測されるインビボ受容体結合活性と、中枢神経系における情報伝達との関連を検討する目的で、単シナプスの情報伝達に焦点をあて、特定の神経シナプス(海馬歯状回顆粒神経細胞のグルタミン酸シナプス)のレスポンスを計測するために、上記シナプスの前繊維の電気刺激により放出されるグルタミン酸がシナプス後細胞に発生させる興奮性シナプス膜電位(EPSP)を測定した。具体的には海馬穿通枝に刺入した単極電極を電気刺激発生装置により刺激し、海馬歯状回顆粒細胞の集合EPSP(pEPSP)を記録電極より測定した。まず電気的な測定の感度及び安定性を向上させるため、ラット頭部直上に配置し電極からの微弱信号を至近で増幅し安定送信させるブリアンプの作成を行った。入力部にFETを利用した超低ノイズOPE-Amp INA110(外形6x5xlmm)を乾電池駆動で利用し超高インピーダンス入力、低インピーダンス出力を実現した。その結果、従来から多く用いられているFETのみで作成されたプリアンプに比べ雑音レベルが1/10に低下するとともに、ラットの動きやその他のノイズ源に対する出力信号の安定性が格段に向上した。取り込んだ信号の解析は、刺激に同期してADコンバータによりコンピューターに取り込んだ信号を、処理し、刺激からpEPSP立ち上がりまでの時間、pEPSPの立ち上がり勾配、波高などを自動で解析するシステムを構築した。RIトレーサー法に関する検討では受容体作動薬が受容体を占有する様子をRIトレーサーにより測定する方法論について基礎的検討を加え、べンゾジアゼピン系薬物の受容体への結合をインビボで測定する方法を確立した。また直接はRIトレーサーが結合する受容体に作用しない薬物がインビボにおいては受容体の結合を変化させることをいくつかの薬物やトレーサーについて見いだした。今後この全く異なった2つの系における様々な現象がどの様な相関を示すかをより詳細に検討する予定である。
|