本年度は科研費交付申請書に記したとおり、(l)II・III型LANPのクローニングと一次構造決定、(2)発現系の確立、(3)LANP結合タンパク質の検索を優先的に行った。 (l)のクローニングについては、RT-PCRを中心に解析を行っているが、現在、進行途中である。(2)についてはLANPをグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質としてE.Coli内で発現させ、親和性及び、陰イオン交換クロマトグラフィーで精製した。1リッターの培養液より約10mgの融合タンパク質が精製できた。(3)の結合タンパク質の解析については、(2)で精製した融合タンパク質GST-LANPを組織抽出液と混合後、結合タンパク質をGST-LANPごとグルタチオンセファロースに吸着させ、回収した。得られた結合タンパク質はSDS-PAGE後、銀染色法とウェスタンブロッティングにより解析した。さらに、銀染色後のゲルからタンパク質バンドを切り取り、ゲル内でトリプシン消化し、目的タンパク質を分解物として抽出した。分解物は逆相系HPLCで分離・精製し、一次構造を決定した。LANPに特異的に結合するタンパク質として、ラット小脳可溶性画分に主に分子量約90kDaの2種類のタンパク質が認められた。部分アミノ酸配列分析とその相同性解析から、高分子量のタンパク質はalpha adaptinAであり、低分子量のタンパク質はalpha adaptinCとbeta adaptin、構造未知タンパク質の、少なくとも3種類のタンパク質の混合物であることが判明した。ウェスタンブロッティングの結果からも、これらの結合タンパク質が細胞膜由来の被覆小胞タンパク質であるalpha adaptinとbeta adaptinを含んでいることが確認された。一方、非クラスリン被覆性小胞由来であり、beta adaptinと相同性が高いbeta COPや、ゴルジ由来のクラスリン被覆小胞タンパク質であるgamma adaptinは結合タンパク質画分に含まれていなかった。これらの結果から、細胞膜の輸送小胞タンパク質に対するLANPの結合は特異性が高く、エンドサイトーシスへの関与が想定された。また、alpha および beta adaptinとLANPの結合は成熟ラットでも確認され、これらの結合が小脳の形成だけでなく、その維持にも関与していることが予想された。この画分からは、フォスファターゼ2Aは検出できなかったため、フォスファターゼとの結合解析は個別に行う必要がある。さらに、LANP結合画分に含まれる構造未知タンパク質を解析することで、細胞質におけるLANPを介した情報伝達経路の解明が進むと期待できる。
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