研究概要 |
ラット脊髄後根神経節(DRG)に発現してシュワン細胞に作用するglial growth factor(GGF)のmRNAをRT-PCR法、ハイブリダイゼーション法等によって解析した結果、単一遺伝子の選択的スプライシングにより生成される16種類のアイソフォームを同定した。主なスプライシング部位は、N末端・糖鎖結合部位・傍膜貫通・細胞内の各ドメインに認められたが、既知のNDFβ1,β3およびGGFIIに相当するもの以外の13種類は、全て新しいアイソフォームであった。このように、末梢神経系において、多種類のGGFのアイソフォームが作用していることが明らかになった。また、リボプローブマッピング法により出生後のラットDRGにおけるGGFmRNAの発現を解析した結果、膜貫通型、特にβ1アイソフォームが最も優位に発現することが明らかとなり、パラクリンとともにジャクスタクリンシグナリングの関与が示唆された。GGFmRNAの発現は出生後約1週間のミエリン形成前の時期にはほぼ一定しており、この時期にGGFが安定した発現を示すことにより、幼若シュワン細胞に対して生存因子として作用していることを示唆した。この発現はミエリン形成期以降徐々に低下したが、特にN-末端にエクソン2を有するアイソフォームの発現は成体DRGにおいて消失しており、このアイソフォームがミエリン形成前の末梢神経系に一過性に強く発現して、シュワン細胞の増殖に作用する可能性が示唆された。 また、3'RACE法およびcDNAライブラリのスクリーニングの結果、レセプター結合部位であるEGF様ドメインを有さない特殊なGGFアイソフォームのcDNAクローンを2種類得た。現在このアイソフォームのin vivoでの発現をin situ hybridization法やリボプローブマッピング法により解析しており、また、発現ベクターの作成に従事している。
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