研究概要 |
1. 正常細胞でのシナプトタグミン-クランプ機構についての検証 我々は高透過細胞系を用いて、シナプトタグミン-クランプ機構を解析してきたが、本年度は、正常な細胞内でのこの機構の検証を目的として、CALI法(Chromophore-Assisted Laser Inactivation:レーザー分子機能不活性法)の確立を行った。CALI法は、正常細胞内で、レーザー照射により、マラカイトグリーン(MG)標識抗体が特異的に結合した機能分子ドメインを選択的に不活性化することが可能な実験法であり、開口放出機構研究に対する新たなブレイクスルーとして期待される。クロマフィン細胞内へのMG標識抗体導入法としてまず、Scrape-loading法を確立した。SNARE蛋白質に対する抗体をMG標識し、この方法により導入した細胞にレーザー照射を行ったところ、カテコールアミン分泌機能を抑制することに成功した。現在、抗シナプトタグミン抗体(モノクローナル抗体)を用いて、検討を進めている。 2. シナプトタグミンとRACK1との相互作用 RACK1はProtein kinase C(PKC)の受容体蛋白質として見出されているが、C2ドメインを持つシナプトタグミンとも結合することが知られている。組織化学実験により、クロマフィン細胞では、RACK1は、静止時、刺激時ともに細胞膜直下(F-actinと同局在)、顆粒膜、核膜周辺部に局在していた。PKCα,βは、静止時には細胞質に局在しているが、刺激時にはPKCαは細胞膜直下へ、PKCβはRACKlと同じ部位へ移行した。F-actinをモノマーへ解離させた場合、細胞膜直下に局在するRACK1の消失が観察され、PKCα,βの移行が観察されなかった。これらのことは、PKCのPACK1を介したF-actinへの結合が、開口放出のプライミング機構に重要であることを示唆している。一方、顆粒膜に局在しているRACK1は、シナプトタグミンと結合している、或いはPKCβの受容体であり、シナプトタグミンのリン酸化を促進させる役割を持つ可能性が推察された。
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