1.核内転写因子AP-1はc-Fos及びc-Junタンパク質により構成されている。それらの遺伝子であるc-fos/c-junの転写調節の仕組みを明らかにする目的で、細胞外水素イオン(H^+)の変化に対するc-fos/c-jun遺伝子の発現変化を神経成長因子の添加で神経細胞に分化するPC12細胞で調べた。細胞外液のpHを7.40から7.20に酸性側にシフトさせるとc-fos及びc-jun遺伝子の発現はそれぞれ178%、253%まで増加した。この発現の増加はCa^<2+>/calmodulinの阻害剤であるTrifluoperazineで有意に抑えられた。これらのことからPC12細胞においてc-fos/c-junは細胞外液のpHの酸性側シフトによりCa^<2+>/calmodulinを介して発現が高まることが示された。 2.さらにこの細胞外液のpH酸性シフトの胎仔神経細胞に対する感受性を明らかにするために蛍光色素によるH^+感受性細胞の同定法を開発した。 さらに、その細胞の特性を調べた結果、呼吸中枢の培養神経細胞においてその6%がH^+感受性細胞でありそのうち57%がグルタミン酸、23%がGABA含有神経細胞であることが明らかになった。 以上の成果は本研究課題を遂行するうえでの重要で新しい知見である。
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