当該研究において、現在までに海馬歯状回神経細胞をグリア細胞のマイクロアイランド上で培養し、オ-タプスを形成させることにはほぼ成功した。その細胞を用い、ホールセルパッチクランプ法を用いて、次のようなことを明らかにした。(1)この培養系における、伝達物質の放出と細胞外Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_e)との関係を調べ、放出量と[Ca^<2+>]_eの関係がミカエルスーメンテン型であると仮定し見かけのK_mとHill係数を求めた。(2)歯状回神経細胞のオ-タプスにおいては、数十ミリ秒の短い間隔で2回連続刺激を行うと、2回目のEPSCは1回目のそれより振幅が小さくなる、paired-pulse depression、を示す細胞がほとんどであることが分かった。また、[Ca^<2+>]_eを変化させ伝達物質の放出確率を変化させると、paired-pulse moduration(ppm)が変化した。ppmと放出確率に対するモデルを作りその関係を推測したところppmは放出確率にのみ依存し、放出可能なシナプス小胞の数には依存しないことが分かった。(3)adenylyl cyclaseを活性化するforskolinの投与によりEPSCの増大が見られるが、この時のppmの変化の測定からforskolinによる伝達物質放出増大は、放出確率の増大によるものであると推測された。(4)forskolin投与によるEPSC増大はPKAの阻害剤により阻害されたことから、この伝達物質放出増大はPKAによるリン酸化過程を介していることが推測された。 これらの結果を踏まえて、forskolin投与時のEPSCに対する[Ca^<2+>]_e依存性を調べることにより、forskolinによる伝達物質放出増大機構を明らかにする予定である。
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