神経系特異的新規細胞接着分子OCAMの構造・発現および機能の解明を行い、以下に述べる成果を得た。 ゼブラフィッシュOCAMおよびNCAMのcDNAクローニング 平成9年度においてマウスOCAMの全一次構造を決定した。平成10年度は神経系の構造がより単純で、発生が速く進み、かつ最近の遺伝学的解析の飛躍的進歩によって有用性が著しく高まったゼブラフィッシュにおけるOCAMおよびNCAMホモログ分子のcDNAクローニングを行い、それらの全一構造を決定した。ゼブラフィッシュにおいてもこれらの分子は5つの免疫グロブリン様ドメイン、2つのフィブロネクチン・タイプIII様ドメインを有しており、進化過程におけるドメイン構造の保存が確認された。 ゼブラフィッシュOCAMの発現分布の解析 ゼブラフィッシュOCAM mRNAおよびNCAM mRNAの発現を、in situ hybridization法により詳細に解析した。これら2分子の発現パターンはオーバーラップはするものの、異なった神経核に選択的に発現する傾向が認められ、神経回路網の形成および維持にこれら分子が機能しわけている可能性が示唆された。 マウスOCAMの染色体座の決定 マウスOCAMの染色体座をinterspecific backcross解析により決定したところ、第16染色体に位置することがわかった。この染色体座はヒトでは第21染色体のダウン症候群原因領域付近に相当することから、OCAMとダウン症候群における中枢神経障害の関連が示唆された。
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