電位依存性カリウムチャンネルの発現が神経細胞の分化・成熟にどのように関わっているのかを明らかにするために、まず、小脳顆粒細胞に発現するカリウムチャンネル遺伝子を同定し、発生過程とそれらの遺伝子の発現時期、および、細胞の持つカリウム電流との間の対応関係を明らかにした。 まずマウス脳組織断切片に対するin situ hybridizationによって小脳顆粒細胞に発現する電位依存性カリウムチャンネル遺伝子を同定した。これまでに小脳での発現が報告されているKv1.1、Kv1.2、Kv3.1、Kv4.2のそれぞれについて、マウスcDNAをクローニングしてプローブを作製し、生後の小脳発達を追って検討をおこなった。その結果、Kv3.1は外顆粒層および内顆粒層の細胞に発現がみられ、Kv4.2は外顆粒層から内顆粒層への細胞移動に伴う新たな遺伝子発現が観察された。Kv3.1、Kv4.2はそれぞれ遅延整流型、およびA-typeのチャンネルを形成することが知られている。そこで培養小脳顆粒細胞を用いてカリウム電流をホールセルクランプ法にて測定した。その結果、未熟な双極型の顆粒細胞では遅延整流型の電流が観察され、より分化の進んだT字型の細胞では遅延整流型に加えてA-typeの電流が観察された。T字型の細胞は脳内における外顆粒層から内顆粒層への移動時期に対応すると考えられるので、この結果は、遺伝子の発現パターンの結果とよく対応していた。
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