我々は、神経細胞のもっとも重要な特徴である活動電位を獲得のメカニズムを明らかにしたいと考え、小脳のmicroexplant cultureを用いて顆粒細胞の分化・成熟に伴う電位依存性カリウムチャネルの変化を調べた。抗体染色によりKv3.1は培養初期から顆粒細胞の軸索に認められ、Kv4.2は培養後期の細胞体に発現してくることがわかった。また、TypeII Na^+チャネルは培養後期の軸索に発現が認められた。これらは、in vivoにおける遺伝子発現及び電気生理学的解析の結果とよく一致していた。そこで次に、この系でバッチクランプ法を用いて電流注入による細胞の活動電位を測定した。培養初期の細胞では内向き電流がほとんど無く活動電位も記録されないが、培養経過に従い観察されるようになり、 A-typeK^+電流を発現するようになると反復発火が観察された。この発火はTTX感受性であり、4-AP投与によりK^+電流の一部を阻害すると発火頻度の減少がみられた。以上の結果は段階的な遺伝子発現が興舊性の変化を担っていることを示唆している。さらに、 A-typeのK^+電流の発現の意義を明らかにするために、マウスのKv4.2 cDNAをクローニングして変異体を作製し、ドミナントネガティブ効果を示すことをCHO細胞を用いて示した。この変異体を小脳顆粒細胞に導入したところ、A-typeのK^+電流は発火のタイミングを制御していることが示された。
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