タンパク質のリン酸化は、生体の機能を調節する上で大変重要な機能を担っている。中枢神経系においても、神経伝達物質受容体のリン酸化と神経可塑性について多くの報告が成されている。 これまでのリン酸化の実験には放射性同位元素の使用が不可欠であった。しかし、放射性同位元素の使用による、人体および環境への影響を考えると、代替法の開発が当然期待される。我々は^<31>P-NMRを用いてタンパク質のリン酸化を同定する方法を開発してきたが、昨年までに、合成ペプチドのリン酸化がその周囲のアミノ酸の配列に依存して^<31>P-NMRで区別可能であること、また、GSTとの融合タンパクのリン酸化も同定できること、を見いだした。本年はこの方法を用いて、未だ明らかとされていないAMPA容体GluR2サブユニットのリン酸化を同定することを試みた。まずGSTと細胞内GluR2 C末端領域の融合タンパクを作成した。これをin vitroでProtein Kinase C(PKC)を用いてリン酸化し、SDSでタンパクをアンフオウルドした後、^<31>P-NMRを用いてそのリン酸化を測定した。pH7.5では大きなピークが同定されたが、pHを6.0にシフトすると、そのピークは6個に分離した。このことよりGluR2 C末端領域は少なくとも6個のPKCリン酸化部位を持つと考えられた。さらにそのケミカルシフトから、一つはスレオニンのリン酸化と推定された。また、6個のリン酸化ピークのうち2個は他に比べて著しく高く、GluR2 C末端領域の2つのセリンが特によくリン酸化されると考えられた。現在、site-directed mutagenesisを用いてそれぞれのP-NMRピークに対応するアミノ酸残基を同定する作業を行っている。なお、現在までの成果はMolecular Cellular NeuroscienceおよびBrain Researchに投稿中である。
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