小脳Purkinje細胞には、登上線維と平行線維からの2種類の興奮性入力が存在するが、これらを同時に刺激すると平行線維シナプスに選択的に伝達効率の長期抑圧(LTD)が起こることが知られ、この可塑的現象は、行動学的研究や最近のノックアウトを用いた研究により、運動学習の基礎過程であることが強く示唆されている。現在までにLTD発現の必須因子の一つとして、IP3およびryandodineによる、プルキンエ細胞滑面小胞体に存在する細胞内Ca^<22+>ストアからのカルシウム放出の関与が培養プルキンエ細胞の実験で報告されている。本研究は、dilute-opisthotonus (DOP)ラットに着目しプルキンエ細胞の樹状突起スパイン直下の細胞内Ca^<2+>ストアのLTDに対する役割を明らかにした。DOPラットは、自然発生mutantで、小脳Purkinje細胞の樹状突起スパインでの滑面小胞体のみが欠損していることが報告されている。私達は、dop ratにおいて小脳の長期抑圧(LTD)が欠如していることを見出した。平行線維および登上線維シナプス伝達は正常であり、電位依存性Ca^<2+>チャンネルも正常であった。さらに抗体免疫染色ではプルキンエ細胞樹状突起スパインのみのIP3受容体が存在しなかったが、代謝型グルタミン酸受容体、PKCrの分布は正常であった。この結果より、LTD誘発にはプルキンエ細胞樹状突起スパイン内でのCa^<2+>動員が必要であることが示唆された。
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