1998年度研究実績 ネコ大脳高次視覚領の一つである外側シルビウス上領尾側輻輳領域に存在する短潜時領域及び長潜時領域(脳内微小刺激によりそれぞれ短潜時、長潜時で輻輳運動が誘発される)間の関係を、両領域間で視覚応答の潜時を比較することで検討した。実験には成ネコ4匹を用い、必要な手術はあらかじめペントバルビタール麻酔下で無菌的に行った。記録実験は覚醒状態で行った。脳内微小刺激及びニューロン活動はガラスタングステン電極で密閉式チェンバを通して行い、両眼の眼球運動は磁気コイル法で記録した。視覚刺激は計算機制御の下、レール上をネコに向い接近する視標を用いた。潜時は、視覚刺激開始からニューロン活動が視覚刺激2秒前から1秒前の間の平均ニューロン活動+2SDを越えるまでの時間とした。また、視標接近前に予告信号を与え、条件反射的輻輳を誘発させることで、輻輳関連ニューロン活動を同定した。 ニューロン活動を130個記録した内、短潜時領域から46個、長潜時領域から24個のニューロンに関しては、複数の視標速度で応答を記録したところ、短潜時領域と長潜時領域の間で統計学的な有意差がなかった。また輻輳関連ニューロシ活動は15個記録したが、ほとんどが短潜時領域であり、短潜時領域が長潜時領域に比べ、輻輳運動の出力系に近いことを示唆する。今年度の研究成果については、第76回日本生理学会大会で発表する予定である。
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