本年度は、視覚誘導性腕運動における運動軌道の脳内生成機構を解析するための運動課題をサルに習得させることに主眼をおいた。2頭のサルに次のような2種類の視覚誘導性腕運動課題を習得させることに成功し、さらに1頭のサルも現在訓練中である。また、運動課題を習得した1頭のサルから課題遂行中の腕運動に関連した神経細胞活動を記録することに成功し、現在解析中である。来年度はこのような神経細胞の例数を増やし、解析結果を国際学会等で発表する予定である。 [運動課題1]水平面上で約30×30cmの範囲でハンドルを自由に動かすことができるマニピュランダムを用いる。このマニピュランダムのハンドルの位置をディジタイザを用いてカ-ソルとしてコンピューターディスプレイ上に表示させる。ディスプレイ中央に視度約3度の円形の視標が提示され、サルはこの視標内に1秒間カ-ソルを保持するようにハンドルを操作しなければならない。次に、この中央の視標が消えた後、同一のディスプレイ上の半径約10cmの円周上8点の内1点に視度約3度の円形の視標が提示され、サルは視標提示後1.5秒以内にカ-ソルを視標に合わせなければならない。各位地の視標に対して、90%以上の試行で成功するようになった時点をもってこの運動課題を習得したとみなす。 [運動課題2]運動課題1と同じ内容の運動課題であるが、ハンドルの位置をカ-ソルとして表示する際にコンピュータ内部で時計方向へ45°の回転座標変換を行う。例えば、カ-ソルを真上に動かすためには運動課題1ではハンドルを奥に動かさなくてはならないのが運動課題2ではハンドルを斜め左奥に動かさなければならなくなる。
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