昨年度開発した視覚誘導性腕運動課題を遂行中の神経細胞活動を1頭のサル一次運動野から記録することに成功し、これら神経細胞活動と手の運動パラメータとの関連性を解析した結果を日本神経科学大会および北米神経科学会で発表した。 視覚誘導性腕運動課題遂行中に記録した神経細胞活動のうち手の運動に関連する61個の神経細胞活動と手の運動パラメータの関連性を定性的に解析した結果、サル一次運動野には次の3種類の神経細胞グループが存在することが明らかになった。すなわち、神経細胞活動の平均発火頻度が(1)手の加速度に関連しているもの(n=9)(2)手の速度に関連しているもの(n=28)(3)手の加速度と速度両方に関連しているもの(n=24)である。また、各グループは手の運動に平均して、104ms(SD±63ms)、46ms(SD±39ms)、88ms(SD±47ms)、各々先行して神経細胞活動の平均発火頻度が増加することが明らかになった。さらに、各グループの神経細胞には平均発火頻度の増加率が最大となる手の至適運動方向が存在し、この至適運動方向は360゚ほぼ片寄りなく分布していることが明らかになった。 これらの解析結果は定性的分類に基づいているため、個々の神経細胞活動がどの程度手の加速度あるいは速度と関連性があるのか比較するのは不可能である。神経細胞活動と手の運動パラメータとの関連性を定量的に解析するため、現在、線形複変数回帰解析法を用いてデータを再解析中である。さらに、もう1頭のサルからもデータを収集中であり、これらのデータ解析を終了次第、国際学術雑誌に論文を投稿する予定である。
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