研究概要 |
ハンタウイルスは腎症候性出血熱の原因ウイルスで、ブニヤウイルス科に属するRNAウイルスである。この研究ではハンタウイルス内部蛋白の特定のエピトープを標的抗原とする新しいタイプのペプチドワクチンの開発を目的として、マウス実験感染モデルを用いて単クローン抗体E5/G6エピトープペプチドの誘導する免疫応答とその感染防御活性について検討している。 平成10年度は、カセット配列(主要組織適合抗原結合領域)を付加した,E5/G6エピトープのペプチド抗原による免疫応答の解析を明らかにするために、ペプチドを合成しマウスに免疫し免疫応答を測定することを試みた。1. ペプチドデザイン Peptide 1 YEGF-EDVNGIRKP-KAKGIT Peptide 2 YEGFS-EDVNGIR---KAKGIT をMAP及び通常のペプチドとして合成した。これはH-2bのカセット配列に、E5G6エピトープ配列EDVNGIRKPKを挿入したものである。 2. 免疫 MAPのペプチド抗原を100ug/mouse complete adjuvantとともにC57BL6マウスに免疫し、経時的に採血し、抗体価の上昇を調べた。 3. T細胞応答の測定系の確立 牌臓細胞をX線照射によって不活化し、抗原提示細胞として用いることを試みた。昨年度の研究結果から非RI測定系を確立するため代替法として、市販のテトラゾリウム塩類、酵素を比較した結果、WST-1が他の試薬と比べて比較的安定した結果が得られることがわかっている。今年度はWST-1法でT細胞応答測定するための条件設定として、照射線量、細胞数を検討し、ほぼ決定することができた。 4. ペプチドに対する抗体応答 MAP peptideを免疫したマウスから経時的に採血し、ハンタウイルス感染細胞を抗原とする間接蛍光抗体法で血中抗体を測定した。免疫後2カ月たっても明らかな抗体価の上昇は認められなかった。 免疫カセットセオリーに基づいて免疫した場合、誘導される免疫は直接にはヘルパーT細胞である。この免疫法において抗体が上昇する例が報告されているものの、そのメカニズムは明らかではない。今回の2種の免疫ではおそらくT細胞は誘導できたと予想されるが、抗体を誘導することはできなかった。以上の経過から古典的な抗体を誘導するペプチドワクチンとしての応用は難しいことが示された。
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