スンクス扁桃陰窩上皮はヒトと同様に扁桃特有のリンパ上皮共生を示しており、扁桃の免疫機能発現におけるそれら上皮の役割を検索する上で有用なモデルとなる。今回、スンクスを材料にして陰窩上皮ーリンパ球間接着機構について検索を行った結果、次の事が明らかにされた。1.PPDにて扁桃を刺激すると陰窩上皮では遊走細胞数が増加し、M細胞の加わった細胞数6〜10個程度からなるクラスター形成が高頻度に観察された。2.免疫組織化学的に刺激扁桃陰窩上皮では無処置群に比べLFA-1陽性細胞数に増加傾向がみられ、さらに上皮ケラチノサイト膜上に免疫電顕的にICAM-1の発現増強が認められた。3.扁桃凍結切片上でリンパ球を培養すると陰窩上皮の領域に一致したリンパ球の特異細胞接着が認められ、それら接着活性は刺激動物に由来する扁桃切片を用いた場合に無刺激群に比べ有意に高い上昇が示された。それらは培養系にICAM-1あるいはLFA-1の中和抗体を添加することで60〜75%の阻害を受けた。 以上のことより、スンクス扁桃では抗原刺激に応じて陰窩上皮内で接着分子の発現パターンが変化し、クラスター形成が誘導されたと思われる。この構造は陰窩上皮内に侵入した口腔内抗原の提示や認識のために発達した機能的ユニットである可能性があり、クラスターを取り囲むケラチノサイトはユニット構造の支持体として重要であるばかりでなく、ICAM-1発現という陰窩上皮特有の性格を示すことでクラスター構成細胞の活性化にも関与していることが示唆された。このようにスンクス扁桃の陰窩上皮では上皮ーリンパ系が相互に協調し、扁桃に誘導される免疫応答の初期段階に重要な機能を果たす環境を作り上げているものと思われる。また、上皮ーリンパ球間の接着抑制が上皮内クラスターの構造や機能、さらに扁桃免疫応答にも影響を与える可能性も予想された。
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