スンクス肩桃陰窩上皮はヒトと同様に扁桃特有のリンパ上皮共生を呈しており、肩桃の免疫機能発現におけるそれら上皮の役割を検索する上で有用なモデルとなる。昨年度は陰窩上皮とリンパ球の接着現象をin vitro実験系により解析した。本年度の実験を遂行中、EYLab製抗マウスIgA抗体の特定ロットがスンクスIgAに高い交差反応性を示すことが判ったために当初の実験計画に若干の修正を加え、粘膜局所免疫系において重要な役割を果たすIgA産生系の細胞動態と陰窩上皮における接着リンパ球との関連について検討を加えた。その結果、次の事が明らかにされた。1.抗スンクスT細胞、あるいはB細胞モノクローナル抗体を用いてスンクス扁桃陰窩上皮を免疫電顕的に検索すると、同上皮内にはT細胞のみならず多数のB細胞や形質細胞が遊走し、陰窩上皮ケラチノサイトと接着していることが示された。2.抗マウスIgA抗体を用いたスンクス陰窩上皮の免疫組織化学的検索から、陰窩上皮内にはIgG、IgMに比べ非常に多くのIgA産生形質細胞が分布していることが明らかにされた。3.IgA産生形質細胞は陰窩上皮のみならず、口腔の粘膜下組織や鼻粘膜でも優位な分布が示された。 以上のことより、スンクス扁桃は局所粘膜免疫系における主要なIgA産生組織であり、その形質細胞の分化に陰窩上皮が重要な場として機能していることが推測された。陰窩上皮内に遊走し、ケラチノサイトやM細胞と接着するB細胞がすでにIgA産生系ヘコミットされているかどうかは明らかでないが、スンクス扁桃には陰窩上皮内における細胞接着によるシグナル伝達やサイトカイン分泌で形成される微小環境により、感作抗原に対するIgA産生へのクラススイッチが優位に誘導されることが示唆された。IgA産生形質細胞の分化と陰窩上皮との接着機構の関係については現在も解析進行中である。
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