研究概要 |
本研究では、SQUID磁束計を用いて脳磁図の計測を行い、脳内電源の性質を明らかにし、得られた知見をもとに、脳機能推定に有用な脳内電源モデルを考案し、脳内電源推定のアルゴリズムを開発することが目的である。本研究では以下のような成果が得られた。小さなコイル径を持った高分解能SQUID磁束計を用い、ラットの心磁図、視覚誘発脳磁図,聴覚誘発能磁図の測定に成功した。このSQUID磁束計は、直径約30mmの円の範囲内に直径5mmのコイルを12個配置したものであり、コイル間の間隔は5mmである。ラットの心磁図のQRS波は、約20、30pTの大きさであり、トポグラフィの時間的変化を求めることが出来た。視覚誘発脳磁図の測定では、後頭部から数100fTの信号が確認された。しかし、同時に網膜電位を計測すると、網膜電位の波形の形状と誘発脳磁図の形状が良く似ており、網膜誘発磁図と視覚誘発脳磁図が重畳していることがわかった。ラットの網膜と視覚野は10mm以下の距離しかなく、今のところ2つの信号の分離は難しい段階である。聴覚誘発脳磁図では、潜時34msecに明瞭な反応が観測され、トポグラフィにおいても極性の反転が見られた。この発生源は、外耳道の約3mm内側に測定された。 以上、この高分解脳磁束計を用いることにより、小動物の誘発脳磁図の測定が可能であることが示され、発生源が推定可能であった。今後、動物による侵襲的実験と組み合わせて脳磁図の発生機構がより詳しく調べられる可能性が示された。
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