血液適合性材料としてのリン脂質ポリマーの合成及び機能評価

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09780795
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 岩崎 泰彦 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 助手 (90280990)
• キーワード: 医用高分子 / 血液適合性 / 表面分析 / リン脂質ポリマー / リン脂質吸着 / タンパク質吸着 / 血小板粘着

研究概要

本研究は、血管内皮表面類似構造を材料表面に構築することのできる新規なリン脂質ポリマーを合成及び、血液適合性の評価を目的とし、安定なリン脂質吸着層を形成させるための表面を、リン脂質ユニットの構造及び組成、既存の医用高分子への修飾法を詳細に検討している。
重合性基と極性基間のスペーサーの化学構造をアルキル基(MAPC)及びオキシエチレン基(MEOnPC)と変化させたリン脂質モノマーを合成した。まず、リン脂質モノマーを合成するための重要な中間体である、ω-ヒドロキシアルキルメタクリレート(HAMA)の合成法及び精製法について詳細に検討した。これに基づいてリン脂質モノマーを大量合成法を確立した。MAPC及びMEOnPCと疎水性のアルキルメタクリレートとのコポリマーを材料特性を考慮しながら、ランダムコポリマーをポリマーのシークエンス制御に注目してラジカル重合にて合成した。
リン脂質ポリマーの構造解析はFT-IR及び^1H-NMRで行い、ポリマー中のリン脂質ユニット組成はリンの定量により算出した。上記に示したリン脂質ポリマーをpoly(BMA)に被覆またはポリエチレン表面にグラフト重合し、試料を作製した。リン脂質ポリマーを被覆した表面をX線光電子分光計(XPS)及びATR-FT-IR法を用いて解析したすることにより、表面にリン脂質極性基が効果的に濃縮されることを見いだした。また、リン脂質ポリマーをグラフトした表面ではグラフト鎖のコンフォメーションにリン脂質ユニットの化学構造が影響を及ぼすことが明らかとなった.リン脂質ポリマーを被覆したpoly(BMA)膜を水及び70%エタノール水溶液に所定時間浸漬し、リン脂質ポリマーの溶出量を定量した結果、リン脂質ポリマーの溶出は確認されなかった。
リン脂質ポリマーで修飾した表面にウサギ新鮮血を接触させた結果、タンパク質の吸着及び血小板の粘着を効果的に抑制することが明らかとなった.また、この血液適合性にリン脂質ユニットの化学構造の違いが影響を及ぼすことも確認された.

研究成果

• [文献書誌] Yasuhiko Iwasaki: "Protein adsorption and platelet adhesion on polymer surfaces having phospholipid polar group connected with oxyethylene chain." Journal of Biomaterials Science,Polymer Edition. 8(2). 91-102 (1996)
• [文献書誌] Yasuhiko Iwasaki: "Effect of Reduced Protein Adsorption on Platelet Adhesion at the Phospholipid Polymer Surfaces" Journal of Biomaterials Science,Polymer Edition. 8(2). 151-163 (1996)
• [文献書誌] Yasuhiko Iwasaki: "Reduction of surface-induced platelet activation on phospholipid polymer" Journal of Biomededical Materterials Research. 36(4). 508-515 (1997)
• [文献書誌] Yasuhiko Iwasaki: "Stabilization of Liposomes attached to polymer surfaces having phosphorylcholine groups" Journal Colloid and Interface Science. 192(2). 432-439 (1997)
• [文献書誌] Yasuhiko Iwasaki: "Platelet adhesion on the gradient surfaces grafted with phospholipid polymer" Journal of Biomaterials Science,Polymer Edition. (1998)