本年度は、まず液相中で測定が行えるクオ-ツクリスタルマイクロバランス(QCM)装置を作製した。センサ本体は、市販の金蒸着電極をもつATカット水晶発信子(共振周波数6MHz)を用いた。これにリン酸カルシウム系ガラスをターゲットとしたスパッタ法により、水酸アパタイトをコーティングした。また、センサ保持部と試料チェンバーよりなるホルダーを自作した。試料チェンバーには、ポンプを接続することにより、試料を連続的に導入できるようにした。 計測回路は水晶発振子駆動部には市販のファンクションジェンレータを用いた。信号検出部には、自作の高周波カップラー及び混合器を使用した。比較信号発生部には自作のPLL発振器を使用した。このPLL発振器の標準信号には、周波数カウンタに内蔵されている高精度タイムベースの出力を用いた。信号測定部には、市販のデジタルオシロスコープと周波数カウンタを使用した。ファンクションジェネレータ、デジタルオシロスコープ及び周波数カウンタはすべてマイクロコンピュータに接続して一括して制御できるようにした。制御用のプログラムは自作した。 次に、水酸アパタイトをセンサ上にコーティングしたQCM装置により、ヘモグロビンとミオグロビンの吸着実験を行った。両者の吸着特性の差が、吸着量並びに吸着強度の経時変化から明確に測定できた。また、本装置が極めて高い検出感度をもつことが確認できた。以上より本研究の当初の目的である、「水酸アパタイトに対する各種薬剤の吸着挙動のQCM法による解明」に使用できるQCM装置が作製されたことが実証された。
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