本研究は、超音波断層法の高速度撮影像における臓器2次元運動速度の可視性を行い、臨床に応用することを目的としている。まず、超音波断層像における反射体の1次元変位の測定法を提案した。60フレーム/秒以上で記録された反射体は位置及び形状が保存されることを利用し、輝度と輝度勾配の演算から変位の算出式を導いた。また反射体を模擬したガウス分布関数を用いて変位測定条件を求め、実際にコンニャクをμmオーダーで動かして変位を測定した。 次に反射体の輝度分布を拡大する画像処理の手法を開発した。断層像において超音波の進行方向には反射体の変位測定に必要な輝度分布が得られないため、断層像にガウス分布関数によりコンボリューション演算を導入して輝度分布を拡大した。まず点反射体を用いて輝度分布の標準偏差を測定し、変位の測定条件に合致するように実際の断層像の輝度分布を拡大した。 以上の前段階を踏まえ、先に提案した1次元変位算出法を2次元の画像に応用した。心臓または動脈の輪切り像では組織は同心円上の運動をすることから、局座標を適用して2次元速度の計算式を導いた。 臨床応用として、頚動脈の短軸断面へ適用した。まずカフ式連続血圧計により血圧を測定し、圧変化に対する壁の拡張・収縮速度との相互関係から血管壁粘弾性モデルを構築した。次に血管壁の円周方向の圧力と歪み速度の波形を比較し、機械的な入出力関係があることを確認した。 頚動脈の拡張・収縮速度の測定法を発展させ、血管断面の粘弾性特性を抽出することに成功した。これから動脈硬化の指標となりうる弾性係数の算出法を開発した。まずゴムチューブをポンプで拍動させ、円周方向の圧力と歪み速度を測定し、それらの関係から得られる指標がチューブの材質を反映することを示した。さらに同様の処理を健常者及び循環器疾患の患者間で測定し、粘弾性特性を抽出して加齢及び循環器疾患との関係を解明した。
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