遺伝子導入キャリヤ-に要求される機能性は、従来のドラッグキャリヤ-に比較して極めて厳密である。ドラッグキャリヤ-に要求される、細胞・組織との相互作用や、体内動態の制御、あるいは、時間制御的な薬物の放出などに加えて、細胞内に導入された後の核への集積、さらに、最大の問題としては、転写・翻訳に関わるタンパク因子に正しく認識される状況に遺伝子を保つ機能が要求される。これまでの多くの研究では、蛍光顕微鏡などを用いて細胞内に導入した遺伝子の分布のみを追跡してきたが、実際には、導入遺伝子の一過性発現さえも得られない可能性が極めて高い。本研究では、水溶性高分子キャリヤ-を用いた場合に、その親水性とカチオン性のバランスにより遺伝子発現頻度が大きく左右される事が明らかとなり、その発現効率は95%から0%まで変化した。この結果に基づき、最適化された官能基組成を有するカチオンポリマーを調整した。ポリマーとしてはポリペプチドを選び、その配列、並びに、分子量が完全に規制されたものを得るために大腸菌による人工ペプチド発現システムを用いた。即ち{(AG)_mPRNG)}_n配列をコードする合成オリゴヌクレオチドを作成し、大腸筋内発現ベクターに組み込むことで、大腸菌に目的とするポリペプチドを合成させる。現在、これらのシーケンス解析が終了し発現ベクターの調整を行っている。
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