本研究では生体組織の硬さを計測する一手法として、集束超音波の放射圧を用いて生体内組織に微小な変形を与え、その変形の時間的な減衰をパルスエコー法もしくはパルスドップラー法により計測し、その時間的減衰の相対的な度合いから硬さに関連した特徴量を抽出するという方法を提案している。したがって、変位の時間的変化を高精度かつ長時間計測する必要があるため、昨年度はロングメモリを持つ高速AD変換ボードを導入し、変位変化データを高精度かつ長時間の測定を行えるように測定システムの改善を行い、校正した実験システムが実験水槽内でほぼ理論どおりの測定精度を持つことを確認している。本年度は3次元グラフ表示用のソフトおよび機材を導入し、変位測定結果や粘弾性マップを表示するためのシステム構築をおこなった。また、実際に変位測定結果をもとにした粘弾性特徴量抽出のためには超音波による加圧力を推定する必要があるため、小型高感度の圧カセンサシステムを主要装備として導入した。表示システムの構築に時間がかかったため、残念ながら圧カセンサシステムを用いた圧力計測に関しては今年度中に十分なデータ取得を行うことはできなかった。しかしながら、本手法は芝浦工大の田中講師の提案しているパワースペクトル差分による相対変位測定法と組み合わせることにより、生体内部の硬さマップを表示できるようになる可能性が高いため、今後も検討を続けていく予定である。
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