現在国内の糖尿病患者は、約600万人と言われており増加の一途をたどっている。糖尿病は、引き起こされる合併症がその予後を左右し、糖尿病性網膜症で失明したり、発症後約10年で25%に糖尿病性腎不全に合併し、人工透析患者の30%を占め莫大な医療費を費やしている。しかし不治の病の糖尿病も厳密な血糖管理で、その進行を妨ぐことができるが、これには低血糖発作の危険を避け得ない。 そこで本研究は血糖管理のデバイスとして、半透膜を利用したアクチュエータを提案した。これは半透膜を介し高血糖と接触すると水の移動が起こり体積変化が起こる。すなわち血糖の化学量をインスリンを放出させるための機械的運動に直接変える微小浸透圧駆動バルブを半導体プロセスでの構成とマイクロ化を目標とする。 本研究の成果 (A)シリコン基板の異方性エッチングで流路を含むバルブ本体を構成し、ダイアフラム可動バルブをシリコーンゴムで、フォトリソグラフィでレジストを展開するようにスピンコートし、同時にシリコン基板を接着した。すなわち半導体プロセスだけを用いバルブ(バルブ部サイズ5mmX5mm)を構成した。これにより半導体技術を流用でき、更なるマイクロ化も可能である。また低コスト、大量生産、感染の防止になる使い捨ても可能なだけでなく、電子回路とのハイブリッド化も可能である。 (B)エネルギーの供給を要せず外部の血糖値の変化で、ダイアフラムバルブの機械的運動を可能にした。その結果ダイアフラム膜の変位はインスリンを注入するには注射針以上の十分な流路確保できることをレーザ変位計を用い実験的に確認した。またグルコース濃度の上昇に対し流路は線形的に拡大することが分かった。 (C)血糖値の上昇でインスリンが放出され、その結果血糖値が低下すれば駆動を停止する制御系も要しないインテリジェントな自律的システムが可能であることをシュミレーションで確認した。
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