研究課題/領域番号 |
09831004
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
杉村 陽 甲南大学, 理学部, 教授 (30278791)
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研究分担者 |
藤田 和久 ATR環境適応通信研究所, 主任研究員
梅津 郁朗 甲南大学, 理学部, 講師 (30203582)
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キーワード | 量子ドット / 自己形成 / 磁気スピン / 電子相関 / InGaAs / トンネル結合 / ドット間結合 / フォトルミネッセンス |
研究概要 |
初年度である平成9年度は、InGaAs/GaAs自己形成型量子ドット集合体において、ドット間相互作用が強くなるような構造の設計と作製を行った。先ず、この材料系のパラメータを用い、ドットが正方格子状に配置されたとき、磁気スピンの秩序化がおこる可能性のあるパラメータ領域を理論的に検討した。そして、ドット径が5nm程度、ドット間距離が8nm程度、電子密度が1〜10x10^<11>cm^<-2>のときが最適構造となることが明らかになった。ドット配置がランダムとなる場合においても、平均ドット径、平均距離がこれと同程度の場合には、強い電子相関が得られる可能性があると思われる。次に、MBE法を用いてドット密度の異なるInGaAs/GaAs量子ドット系を数種類作成し、その構造を原子間力顕微鏡で見るとともに、その光学特性を調べた。フォトルミネッセンスのスペクトルにおいて、ドット密度を増加させるに従い、そのピーク位置が高エネルギー側に移動するとともに低エネルギー側の裾引きが大きくなっていくという新しい現象が観測された。従来の結果はこれと逆で、ドット密度を増加させるに従い、ルミネッセンスのピーク位置は低エネルギーに移動している。この実験結果を解析するため、この材料系で作った量子ドットがランダムに並んでいる場合と、2次元正方格子状に配列されている場合について、電子のトンネル結合によるドット間相互作用があるとしたときの状態密度の計算を行った。ドット内の電子軌道は球対称なs軌道であるため、ドット間のトンネル結合はあらゆる方向に存在し得る。このことを反映して、ドット間距離が充分近いときはドット間の結合が生じて、電子の状態密度が非対称になり、またピークが高エネルギー側へ移動するという計算結果が得られた。以上の結果から、今回の実験で作製した最も密度の高いドットでは、充分に強いドット間結合が起こっていると考えられる。
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