研究概要 |
1. 目的:本研究は,咬合機能時の咀嚼筋活動が中枢への磁気刺激によりどのように変化するかを解析することによる顎運動中枢制御機構の解明を目的とする. 2. 研究結果: 経頭蓋磁気刺激を加え、それによる頭頚部の筋活動反応を観測した. (1) 末梢刺激による胸鎖乳突筋の反応: 側頭部を磁気刺激すると咬筋・胸鎖乳突筋に比較的低域値で反応が観察される.胸鎖乳突筋が比較的よく反応する部位は頭頂部より約11cm側方に寄った同側であった.この事実と,潜時の観測により,ここで観測された反応は,中枢刺激による筋反射ではなく,末梢運動神経線維を磁気により刺激したことによるH反射であると推定した. (2) 顎位による胸鎖乳突筋の反応性の変化: 下顎の位置による胸鎖乳突筋の反応性について調査した結果,胸鎖乳突筋の反応性は下顎位のみならず咬合接触関係など多くの要因で変化た. (3) 咀嚼運動の中枢制御様式のロボットによる検討: 咀嚼ロボットを用いたシミュレーション実験において,咀嚼時の中枢制御様式を検討した.この結果,インピーダンス制御が比較的よくヒトの制御に類似した動作を実現できることを確認した.磁気刺激をロボットでシミュレートできる可能性を見いだした. (4) 咀嚼時の中枢磁気刺激: ガム咀嚼時に中枢を刺激して検討を加えた.この結果,咬みしめ時(筋活動が存在する区間)に刺激を加えると,刺激直後にサイレントピリオドが存在し筋放電時間は延長することがわかった.
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