動物は、その成長過程で特定の味を付けた飼料を与えられると、成長後もその慣れ親しんできた(familiarな)味つき飼料を嗜好することを昨年までに明らかにした。本年度は、味以外の要素である飼料の形状に対してfamiliarとなった動物も、成長後その食物を嗜好するかどうか、また、familiarとなるのに適する時期や期間があるのかを行動学的に検討した。 離乳直後のラットを4群に分け、食餌としてそれぞれひまわりの種子、ハムスター用球形飼料、ペレット、粉末飼料(ペレットを粉末状にしたもの)を与えて5週間育てた後、この4種類の飼料を交互に(1瓶法)あるいは同時に(多瓶法)呈示し、その摂食量を基に、各動物の食物嗜好を調べた。その結果、いずれの群の動物も、成長期に摂食してきた飼料を有意に多く摂食した。また、この傾向は、1瓶法呈示より多瓶法呈示で顕著であった。 成長後の食物嗜好が得られるのには、成長過程で、特定の食物を摂食する期間、あるいは、時期があるかどうかを調べるため、生後の一定の期間(3日、7日、14日、21日、28日)もしくは、一定の時期(生後1週目、2週目、3週目、4週目)だけ、ハムスター用飼料を粉末状にしたものを与え、その他の期間はペレットを粉末状にしたものを与えた動物の生後5週目での両飼料に対する摂食量を調べた。その結果、離乳後、より長い期間ハムスター用飼料摂食を経験させた群ほど、成長後に当該飼料を好んで摂食する割合が高くなった。また、経験する時期では、3週目までにハムスター用飼料摂食を経験させた群の成長後に当該飼料を好んで摂食する割合が高かった。
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