研究概要 |
培養脳幹は動物の全身状態に配慮することなく,脳幹にアプローチでき,また脳幹を複数に分断できる事から,脳幹における神経回路の解析に非常に優れた手法と言える. 本年度は顎付き培養脳幹にリズミカルな運動をチャンバー内への薬剤投与により誘発し,その特徴を解析することから始めた.培養脳幹を用いて開口筋と閉口筋におけるリズム性活動を解析したところ,GABA拮抗薬:Bicucullineとグルタミン酸のNMDAレセプターagonist:NMA(N-Methyl-DL-Aspartic Acid)の投与によって両筋群にそれぞれリズム性活動が惹起されることが明らかとなった.その顎運動はまさに咀嚼用の開閉口の連続運動であった.それぞれの筋から筋電図を採取し,そのリズムの解析すると開口筋と閉口筋の活動が同期する場合(同期とはin-phase,out of phase,両方を意味する)と同期しない場合が認められた.これは投与薬剤の種類と濃度の違いによると考えられた.いずれにせよ開口筋と閉口筋の活動には別々のリズムジェネレータが存在することが考えられた.またそれぞれのリズムジェネレータは三叉神経運動核近傍に存在することも合わせて明らかとなった. 開口筋と閉口筋のリズムの繋がりについては,bicucullineの投与によって開口筋と閉口筋の活動が繋がりをもつようになった.strychnineとNMAの併用でも開口筋と閉口筋にリズム性活動が惹起されるが両者の繋がりはない.しかしこれにbicucullineをチャンバー内に加えると開口筋と閉口筋の活動が同期する.このことは開口筋と閉口筋のリズムジェネレータ間の繋がりにGABAが何らかの役割を果たしていることを示している. これらの結果は全く新しいものであり今後さらに解析を進めていく予定である.
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