1.アジュバント関節炎ラットの作成:Adjuvant Complete FreundにMycobacterium butyricum菌体を加え菌体濃度を10mg/mlにした。7週齢のLewis系ラットに麻酔下でアジュバントを、尾部基部に0.1mlを皮内注射、および顎関節の直上に0.1mlを注射した。対照群には、アジュバントのかわりに生理食塩水を注射した。両群ラットを3週間後に灌流固定し、顎関節をとり出し、EDTAによる脱灰後、通法にしたがって樹脂包埋を行い純形態の観察を行った。関節炎ラットの顎関節においては、滑膜細胞の増殖、炎症性細胞浸潤、毛細血管の拡張などの典型的な炎症所見が観察されたが、対照群ではそれらの所見はみられなかった。現在まで、アジュバントにより、趾関節では100%のラットに炎症が発症したが、顎関節では8割以上の確率で発症するものの、その程度は必ずしも一定ではなかった。 2.正常ラットおよびアジュバント関節炎ラットの顎関節滑膜における一酸化窒素合成酵素(NOS)の免疫組織ならびに免疫細胞学的局在の検索:6週齢のWistar系ラット(正常ラット)ならびに上述のLewis系ラットを灌流固定し、顎関節をとり出し、EDTAによる2-3日の脱灰後、関節包を剥離して骨を除去した後、凍結切片を作成し免疫染色に供した。ABC法にてType3 NOS(eNOS)ならびにType2 NOS(iNOS)の局在を光顕および電顕にて観察した。正常ラットおよび対照群ラットでは、eNOSは上関節腔前方部、後方部、および下関節腔後方部に強い局在が認められた。電顕による観察により、A型細胞にその局在が確認された。一方、iNOSは上関節腔前方部および後法部に弱い局在が観察されたが、電顕ではその局在が確認できなかった。現在、関節炎ラットについて、eNOSおよびiNOSの局在がどの様に変化するかを観察している。
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