研究概要 |
Shaking Rat Kawasaki(SRKラット)は、川崎市にある財)実験動物中央研究所のウイスター系ラットのコロニーに発見された常染色体劣性遺伝性の神経奇形ラットで、振戦、捩じるような異常運動、歩行障害等の小脳性運動失調を示す。このミュータントラットは、組織学的にみて極めてリーラー奇形マウスに類似する。もしこのSRKラットの異常が、マウス・リーラーと同様にリーリン遺伝子の欠損によるものか、あるいはリーリン蛋白に対する受容体をコードする未知の遺伝子の異常であるならば、SRKラットは、神経芽細胞の移動メカニズムを明らかにする上で極めて重要なモデル動物になりうる。特に、咀嚼に関わる口腔・顔面領域の筋を支配する運動ニューロン群(orofacial motoneurons)の細胞移動のメカニズムの研究は全く未開な分野なので、リーラーマウス、SRKラットは特に有用な実験動物になりうることが期待される。本研究は、正常およびSRKラット(成体)の三叉神経運動核、顔面神経核、疑核の細胞構築ををそれぞれ逆行性に標識し、標識ニューロンの形態と分布を比較して、SRKラットの上記神経核に異常が有るかどうかを調べた。 成体正常ラットおよびSRKラットの咀嚼筋(開口筋として顎二腹筋前腹、顎舌筋;閉口筋として咬筋、側頭筋)、顔面筋(鼻唇筋、オトガイ筋、後耳介筋,顎二腹筋後腹)、腹部食道にワサビ過酸化酵素(Horseradish Peroxidase;HRP)を微量注入し、それぞれ三叉神経運動核、顔面神経核、疑核の運動ニューロンを逆行性標識し、HRP組織化学(TMB;Mesulam法)により標識ニューロンを証明した。SRKラットにおいて、標識顔面神経核ニューロンと疑核ニューロンは背腹方向に広く広がった。同様の結果が、LacZ組換えアデノウイルスを用いた標識法においても得られた。
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