研究概要 |
SRKラットは常染色体劣性遺伝性の神経奇形ラットであり、振戦、歩行失調、躯幹を捻るような異常運動を特徴とする。当該研究期間における成果は以下の如くである。 HRP(ワサビ過酸化酵素)をSRKラットの脊髄に注入したところ、錐体路ニューロンが大脳皮質の垂直方向に異所性に分布することより、SRKラットではリーラーマウスと同様の大脳皮質異常があることがわかった(Ikeda and Terashima,1997)。この奇形ラットでは、大脳皮質の細胞構築異常の他にも海馬の細胞構築にも異常が認められており(Woodhams and Terashima,in press)、さらに嗅球、蝸牛神経背側核、小脳等の皮質構築を特徴とする領域や、顔面神経核、疑核、三叉神経運動核にもリーラーに類似する細胞構築異常が見つけることができた(Fujimoto et al.,1998)。またリーラーマウスでは海馬や上丘に回路異常があるが、SRKラットにおいても同様の回路異常がある(Woodhams and Terashima,1999)。リーラーマウスの原因遺伝子リーリンが同定された1995年を前後にして、さまざまなリーラーフェノタイプ動物が見つかってきた。スクランブラーマウス、ヨタリマウス、cdk-5ノックアウトマウス、p35ノックアウトマウスなどである。このようなリーラーフェノタイプ動物の原因遺伝子を探求することにより、大脳皮質の層構造ができる過程に関与するメカニズムや、大脳皮質の入出力線維の回路形成の分子メカニズムが明らかとなる。それ故、SRKラットの原因遺伝子を解明し、この奇形ラットがこのようなリーラーフェノタイプ動物の中でどのような位置を占めるか明らかにすることために、SRKラットの分子生物学的解析の一端としてリーラーの原因遺伝子リーリンの発現をノザンおよびin situ hybridization法により検討した。またリーリンがコードするリーリン蛋白の抗体により免疫組織化学的に検討した。結論的にいえば、SRKラットはリーリン遺伝子の異常であることが判明した。
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