研究概要 |
本年度は研究計画にもあるようにバクテリオロドプシン,ハロロドプシンを含む膜画分をコンデンサーフィルム用薄膜に吸着させて,光照射による電流電圧の変化を検出する系をほぼ作り上げた.高速度の電圧変化を記録するため新たな増幅器を作製し,最高2MHzで取り込めるAD変換器を計算機に装備してその信号を記録できるようにした.レーザー光源は東京大学理学部の茂木博士との共同研究で使わせていただき,バクテリオロドプシン及びその変異体,二種類の高度好塩菌由来のハロロドプシンについて,時間分解能の極めて高い測定が容易に行えるように装置を作り上げた.現在,今まで明らかでなかったハロロドプシンの電荷移動ステップについての情報が得られつつある. また,イオン輸送一般についての考察をするためにバクテリオロドプシンによるプロトン輸送特性を考慮したモデルによる研究を行った.このモデルではバクテリオロドプシンにならって3ヶ所のイオン結合部位を持ったマルチイオンチャネルを考え,その結合部位のイオンに対する親和性がエネルギー化と脱エネルギー化によって変化すると能動輸送が行えることを示した.さらにこの親和性変化の仕方が,平衡分布を保つような熱揺らぎで起こった場合には,能動的な輸送を起こせず,輸送を起こすためには親和性の異なった状態の分布が非平衡にならなければならないことを明確にして,イオンポンプとイオンチャネルの共通性と本質的な差異を明らかにした.
|