プロミネンス(新情報・焦点)のあらわれるプロソディー(音調)に関連して、次の研究実績を得た。 まず、日本語テクストデータから関連する表現を抽出し、コンピュータ上で利用できるコーパスの形に整理した。次に、タイプ付きユニフィケーション文法、特にその応用であるHead-Driven Pharase Structure Grammarを用い、PierrehumbertやBeckmanによるunderspecifiedな音調モデルにもとづいて、プロソディーを決定する要因である音韻的・統辞的・意味的・語彙的情報を統合する生成モデルについて検討した。さらに、上のモデルにもとづいて、辞書・音韻論・統辞論・意味論・文脈モデルの各部門を情報がどのようにやり取りされて発話中の焦点が生成されるかについて、そのプロセスや個々の文法規定を考察した。特に、辞書、統辞論的規則、音韻論的規則、語用論的規則の中にそれぞれの部門として一般的で簡潔な情報を規定し、それらの間のインターフェースを最低限度規定すれば足りること、そのような文法のアーキテクチャの構成にあたってHPSGおよびPierrehumbertやBeckmanの方法が適していることが確認された。 従来音調やプロミネンスの研究は限定された分野についてしかなされてこなかったので、領域横断的・統合的な本研究の価値は高いと考える。
|