研究概要 |
当研究では、「道順説明」という課題達成実験を遂行する際に、日本語母語話者と非日本語母語話者各々の談話が、相互作用の中でいかに認識され、形成され、確立されていくかというプロセスを明らかにすることを試みる。対照分析の為、以下の3種の接触場面と1種の母語場面を設けた。 (1)説明者:非母語話者(上級日本語学習者)vs.被説明者:母語話者 (2)説明者:母語話者vs.被説明者:被母語話者(上級日本語学習者) (3)説明者:非母語話者(初級日本語学習者)vs.被説明者:母語話者 (4)説明者:母語話者vs.被説明者:母語話者 最初に、上記4つの場面ごとに各10ペアの実験を遂行した。被験者の全ての会話はオーディオ・テープとMDディスクに録音された。次に、これらの録音データをDu bois et al.(1992,1993)の方式で文字化し、データベースとして保存した。談話分析では、上記プロセスを静的な存在として捉えるのではなく、母語話者・非母語話者間での認知および相互作用を経て刻々と変化する存在として、そのダイナミックな特性を捉えることを目指した。研究成果は、以下の雑誌論文として公表された。 村上(1997)では、接触場面でのコミュニケーション効率が低い一因として、コミュニケーション・トラブルの分析を行い、母語話者と非母語話者間における3種の認知フレームの対立を指摘した。村上(1998)では、「道順説明」における2種の参照点機能が存在すること、またそれが地図の図形認知の異なりに基づくことを示した。さらに、これらの機能と表現形式の関係についても記述した。村上(1999)では、コミュニケーション対立を乗り越えるための解決策に焦点を当てた。そこでは2種の解決策が指摘され、その折衝過程が記述された。鹿嶋(1999)では、「道順説明」における空間の参照フレームに焦点を当て、その4種の表現形式を指摘した。
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