接触場面の初対面対話における待遇レベル管理の実証的データを収集することを目的に、初対面場面における日本語母語話者(NS)と日本語学習者(NNS)との会話資料を12組収集し、データベース化した。これは、平成9・10年度に実施したNS間の対話における待遇レベル管理の結果との対照も目的にしている。 【方法】被験者:同一総合大学の大学生(大学院生、研究生等)21名 内訳NS12名(平均24.8歳)、NNS9名(平均27.1歳、日本語:中級および上級レベル) 方法:(1)初対面のNSとNNS同性各1名を1組とし(年齢、立場も同等および近い者同士)、特に話題は指定せずに開始した各組15分ずつの会話をビデオ録画およびテープ録画。(2)会話終了後、フォローアップインタビューにより、待遇レベルがシフトした場合について、意図や感想を聞いた。また、アンケートにより、待遇表現選択に関する意識も調査した。(3)得られた対話資料は、会話分析の方法によりすべて文字化。(4)さらに、ファイルメーカーPro4.1を使用して、語レベル、文末(節末)レベルの待遇レベルを中心にデータベース化した。 【結果】NS、NNSともに基本的待遇レベルはすべて丁寧体であった。これは、NS同士の対話(三牧2000)とは著しく異なる点であり、NSにとっては接触場面であるという認識による調整であると思われる。一方、NNSは、NSの選択レベル(丁寧体)とのアコモデーションなのか、または上級レベルであっても、社会的要因による基本的待遇レベルの多様な設定および同一談話内の待遇レベル・シフトの操作が習得困難であるのかなど、新たな課題が明らかになった。文末文体以外でわずかに観察された待遇レベル・シフトの生起箇所に注目し、引き続き本データを詳細に分析していく一方、さらに条件を変えてデータを収集し、さらに検討する予定である。
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