本研究初年後の平成9年度は、日本語の文章・談話における「段」という言語単位の構造と機能を分析する基本的な方法論の検討と資料収集を行った。さらに、各種データの処理方法、談話資料の文字化の仕方や、文章・談話の構成単位の区分方法を含むデータベース化の可能性について検討した。 まず、日本語の文章論・談話分析・語用論等の先行研究について、「段」分析の有効な枠組みの有無を調べた。改行一字下げ等で表示される「段落」の区分とは異なり、内容上のまとまりとして他と相対的に区分される「段」は、言語単位としての認定基準が問題になる。また、文章・談話の全体構造の規模や内容の複雑さに応じて、大小様々の話題のまとまりが重なり合う段の重層構造を直観的に決めるのは危険であり、特に、談話資料の「話段」の場合は、文章の「文段」に比べて、個々の資料の単位認定に恣意性が大きく伴う。 そこで、複数の理解主体による段落区分と要約文の調査結果と、各種資料の構造と機能に関する分析との関連性の解明を中心に考えているが、収集資料のデータベース化や調査結果のデータ処理のために、パーソナル・コンピュータとスキャナを活用し、データの検索方法や統計的処理を専門的知見に基づいて検討し、分析を進めつつある。 文章資料については、論説文の段落区分と要約文の調査結果を再検討して、文章構造類型と形態的指標を分析し、段の「話題」をまとめる中心文の形態と機能を中心に分析している。談話資料は、研究発表やテレビの対談・相談番組、日常談話、テレビとラジオのニュース等を文字化して、発話と話段を区分し、話題の展開パターンを分析する上で有効な方法論を模索検討中である。本研究で取り扱う分析資料と段の形態的指標の限定が目下急務の課題となっている。
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