研究概要 |
Tauはアルツハイマー病(AD)に特徴的なPHFの主成分である。PHFは痴呆の出現と一致することから、その形成機序の理解はAD解明につながる。我々はクロロキンミオパチー(chloroquine myopathy;CM)の生化学的解析からtauが筋肉においてlysosome経路で代謝される可能性を強く示唆する結果を得ている。本年度の研究ではCMでの生化学的解析結果をさらに形態学的に確認するとともにtauのlysosome代謝経路の検証を脳と肝臓で行うことを試みた。 CMにはrimmed vacuoleが特徴的に認められる。このrimmed vacuoleにはtauの特異的抗体であるtau1とC5の免疫反応性が認められ、lysosomeのマーカー酵素のacid phosphataseの局在と一致した。さらにC5を用いた免疫電顕ではCMのrimmed vacuole内のamorphous materialにtauが存在することが分かった(Murakami et al.,投稿中)。これらのことはtauが筋肉でlysosomeで分解される可能性を強く支持する。 筋肉の結果を脳で検証する実験系の確立を試みた。脳よりlysosome画分を調製し、fetal tauを基質としてin vitro系の確立を検討している。現在、fetal tauのlysosomeへの結合を確認している。他方、tauと結合するlysosome構成蛋白質の検索も行った。その結果、130、100、76kDaの蛋白質がtauと結合することが分かった。現在これらの蛋白質の精製を試みている。 肝臓を用いたin vivo、in vitroの実験からglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)など一部の細胞質蛋白質はlysosomeで分解されることが証明されている。我々はすでにtau transgenic ratの確立に最近成功した。今後このratを用いてtauが肝臓のlysosomeで代謝されるかどうかをin vivoのレベルから検討する予定である。
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