老化促進を示すSAMPマウス9系統と対照のSAMRマウス3系統のマイクロサテライトマーカーによるゲノムタイピングを行った。第4、14、16、17染色体上に、SAMPに共通で、SAMRと異なる領域が同定され、この領域に老化の促進に関連する遺伝子が存在する可能性が示された。成熟期の最大骨量の低いSAMP6と高いSAMP2およびそのF1、F2交雑群雄マウスを用い、マイクロサテライトマーカーの多型と成熟期骨量間の連鎖解析を行った。第11番、13番、X染色体上にQTL(Quantitative Trait Loci)の存在を示した。老化促進を示し短寿命のSAMP11と長寿命のSAMR1の新生仔の背部皮膚より単離、継代培養した線維芽細胞の試験管内加齢を検討した。試験管内加齢に伴い2倍体細胞が減少し多倍体細胞が増加した。この変化は両系統由来細胞に共に認められたが、P11由来細胞では試験管内加齢が促進していることが示された。アミノグアニジン添加はP11由来初代培養細胞の過酸化脂質を減少させ試験管内加齢を遅延させた。SAMP8は加齢に伴い、学習・記憶障害と神経・グリア変性、肝・脳の高酸化状態を来す。2カ月齢のP8と対照のSAMR1雄マウスの脳組織よりミトコンドリア画分を調製し、自由電子産生量、コハク酸脱水素酵素活性、酸化的リン酸化能を測定した。P8はR1に比べ複合体2より下流での酸化的リン酸化機能の亢進、呼吸調節率の低下を認め、脳組織のミトコンドリアが非効率な状態で機能亢進していることを示した。 本研究により老化過程を促進し、老年性変性疾患を増悪する機構にミトコンドリア機能不全による高酸化ストレス状態よる細胞機能障害が関わることが示唆された。さらにSAM系統のゲノムタイピングの情報は今後の遺伝学的解析に有用であると考えられた。
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